今回は論理的思考(ロジカルシンキング)を使った
実用的な戦略の立て方
について紹介します
実用的な戦略の考え方を、本日はNASAのジェット推進研究所で働いた経験も持つ、戦略論と経営論の世界的権威
リチャード・P・ルメルト氏の著書
良い戦略
悪い戦略
著:リチャード・P・ルメルト
訳:村井章子
出版:日本経済新聞社
価格:2,200円 |
から紹介いたします!
みなさん
戦略、、と聞くとどのような印象を持たれますか?
戦争や大企業など規模の大きなイメージのある戦略
しかし、戦略を立てるスキルというものは個人が目標を達成するためにも、非常に役に立つ論理的思考方なのです
はるか昔、紀元前の中国において、すでに孫子という兵法書(戦略書)が書き記されています。
戦略という概念は、直接的な戦争はもちろん、政治・外交・経済など、総合的な戦いで
どのように勝利を勝ち得ていくのか
という考え方として、古くから存在しています
価格:1,980円 |
そして現在、戦争や外交などの古くからの分野以外でも多く使われるようになりました
- 企業の経営戦略
- スポーツの勝つための戦略
- 受験突破の合格戦略
- 商品販売のための販売戦略・低コスト戦略
普段の生活においても戦略という言葉を見ない日はない、というほど「戦略」という言葉はあふれかえっています
本書では戦略を次のように定義しています
「持てる力を集中し、自らの強みを活かして行動の効果を2倍、3倍に高めるアプローチ(取り組み)」
それでは実際にその戦略を立てるとき、どのような考え方でのぞめばよいのでしょうか?
絵にかいたモチではなく実際に役に立つ戦略とは?
そんな戦略をたてるにはどのようにすればよいのでしょうか?
世の中にあふれるたくさんの戦略
しかし、その大半が「悪い戦略」というものであり、本当の「良い戦略」にはなかなかお目にかからない、、
そう著者のルメルト教授は語っています
本書では、まず「良い戦略」と「悪い戦略」のそれぞれの特徴を明らかにします
そして、間違って「悪い戦略」をとらないようにするにはどうしたらよいか
また「良い戦略」の基本構造を理解して、「良い戦略」ではどのような強みが活かされているのか
これらをまるでMBAコースの一コマのようなディスカッションを交え、多数の実例から学ぶことが出来ます
本書は非常にボリュームのある一冊ですが
今回はその中から特に
- 悪い戦略の特徴
- 良い戦略の特徴
- 良い戦略の基本構造
の内容にフォーカスしてお伝えします
これらを理解すれば、効果のない「悪い戦略」を誤ってとることなく、実際に役に立つ「良い戦略」を立てられるようになります
~ 目次 ~
①「悪い戦略」の特徴とは
よくある風景
期の初め、年度の初めなどに、あなたが参加している団体や企業など、多くの組織で新しいプロジェクトのキックオフミーテイングが行われると思います
当期の戦略として役員や部長が声高に挙げるものには
このような力強い目標が発表された後、それを実現するためにはどんな戦略があるのかと期待をすると、、
「みんなの頑張りが目標達成には不可欠だ!」
「全員で協力して乗り切っていこう」
などの勇気や根性、やり遂げる意思が大事だ、という精神論であったり
「必要なのはイニシアチブをとった営業活動
積極的なソリューション提供を行うことだ!」
などとイメージだけのメッセージに終始するなど、、
「悪い戦略」とは
悪い戦略とはどのようなものを指しているのでしょうか
そもそも戦略が立てられていない、ということではありません
また失敗した戦略を刺す言葉でもありません
「悪い戦略」とは
目標として掲げられている項目が多い
実際の行動に結びつく方針が少なすぎる
または全くないものを指します
「悪い戦略」かどうかをチェックするためには
戦略を実現するため具体的な行動
が示されているかをチェックすることが必須です
先ほどあげたような例も含め
「悪い戦略」の4つの特徴
①空疎である(虚飾である)
専門用語や業界用語などを盛り込み、分かり切ったようなことを華やかかつ難解な表現で示すものです
これは例を示した方が分かりやすいですね
EUにおけるクラウド・コンピューティング戦略の報告書には
多数のステークホルダーが関与するコンピューティング資源の 共有プールの弾力的な運用環境で、ユーザーはさまざまなプラットフォームからオンデマンドでアクセスし、適切に設計された透明性の高いサービスを利用できること
との一文があります
一見高度な分析の末に練り上げられたような文章をしてます
しかし、分かりやすい言葉に置き換えるとこうなります
グーグルなどで検索をするとき、実際にどのサーバーやどのソフトウェアが使われているのか、使用者は知らなくてもサービスが利用できること
高度なことを説明しているふりをして、理解できない相手を煙に巻く方法ともとれます
ある大手銀行で掲げられた戦略では
われわれの基本戦略とは
顧客中心の仲介サービスを提供することである
「仲介サービス」という言葉の響きは良いのですが、銀行業における「仲介サービス」とは
「顧客からお金もあずかり、それを貸し出すこと」
を意味します
それって銀行の本業そのものですよね
つまりこの戦略は
「われわれの基本戦略は銀行業務を行うことである!」
というまったく中身のないものになっているのです
本物の専門知識や知見を有しているひとの特徴は
複雑なことを分かりやすく説明できること にあります
「悪い戦略」はこの真逆で、分かり切ったことを必要以上に複雑に見せ
②重大な問題に取り組まない
本来の戦略とは
困難な課題を克服し障害を乗り越えるため
のものであります
つまり
迫りくる重大な問題や、課題を無視した戦略
これにはいくら目標や予算を立てたところで意味はありません
ここではハーベスターという農機具メーカーの例で説明をしています
かつて全米第4位の大企業であったハーベスター
1977年に就任したCEOマッカーデルは、ぬるま湯体質に浸かっていた会社を再生に着手しました
社外のファイナンシャルプランナーや戦略家を雇い、分厚い「戦略プラン」を完成させます
この「戦略プラン」では5つの事業部がそれぞれ作成した、戦略プランを寄せ集めたものでした
しかしその戦略の中身は
各事業部のシェアの拡大とコスト削減の実行
会社全体の売上高と利益を拡大する
と一見それらしい内容でした
外部の専門家をふんだんに採用して作成しただけあって、各事業部ごとの詳細な情報が示されていました
また販売網の強化と製造コストの削減の重要性が述べられていました
この戦略が「悪い戦略」になる理由
それは、当時のハーベスタが抱えていた問題にあります
なぜなら当時のハーベスタが抱えていた一番の問題は
大量の余剰人員による非効率な組織
にあったのです
この問題は設備投資やシェア拡大をしても、解決しない問題でした
米国内でも労使関係が最悪だったハーベスタ
労使交渉で強硬姿勢を貫いた結果、6か月に及ぶ長期ストライキを招きます
会社は立ち直れない状況にまで陥ってしまいました
正しい戦略が取れないまま時期を逸してしまったハーベスト
最後は、会社存続させるため、収益性の高い事業のみを残し、多くの伝統的な部門から撤退することになります
③目標と戦略を取り違える
再掲しますが戦略の定義は次のとおりです
「持てる力を集中し、自らの強みを活かして行動の効果を2倍、3倍に高めるアプローチ(取り組み)」
行動を伴わない戦略は戦略ではありません
そして、その行動の効果を高めるものが「良い戦略」となります
ところが、冒頭の例でも述べましたが、戦略と言いながら、ただの目標やビジョンを提示するだけで
結果を導くための効果的な行動が示されていない
それが「悪い戦略」です
例えば次のようにかかげられた戦略
・顧客に選ばれる企業になる
・創造性あふれる独自ソリューションを提供
・利益率最低20%確保
・意欲的に取り組む文化を根付かせる
戦略というよりはスローガンというような内容が挙げられ、
それらを実現する具体的な方法の提示がない
さらに言えば
それらを実現する強みの有無がまったく検討されていない
こうしたケースでは戦略はほとんど意味を成しません
しかもこのような目標掲示型戦略を立てる組織は
意欲や根性などの精神論に収束します
本書では第1次世界大戦のある戦いを例に、このような精神論に頼った戦略が迎える悲惨な末路を紹介しています
他にも戦略を計画と間違えているというケースもあります
例えば、急成長中の小売りチェーンなど
土地購入、建設、店舗スタッフの確保、教育
などの計画が必要になるでしょう
こうした計画は進捗や不足をチェックするには欠かせないものです
しかし戦略とは
上を目指す機会を見極め
前進を阻む障害を見抜き
乗り越える具体的方法
④間違った戦略目標をかかげる
有能なリーダーとは場当たり的に行動することはなく
どれを優先すべきか
を常に考えて決断をしています
「間違った戦略」とはそれとは逆に、たくさんの目標をごった煮的に詰め込んだ
寄せ集めの目標
というものが多くみられます
やることがあまりにも多い戦略というものは、当たり前ですが
やることが多くて出来ない
ということにすぐに気づきます
そしてすぐに出来ない項目には、「長期的」という言葉が追加されていきます
「長期的な戦略」
こなったらもう誰も今日明日中にすぐ着手することをしなくなってしまうでしょう
本書では、その顕著な例として、アメリカ西海岸にある公的機関の、戦略プランニング委員会が決定した戦略の紹介がされています
その取り組み事項の数はなんと178項目!!
しかも 122番目には、「戦略プランを作成する」という項目の記載があり、もはや笑うに笑えない事態となっていました
「良い戦略」とは
一つか二つの決定的な事項にエネルギーとリソースを投入
しなければなりません
ここで紹介した「悪い戦略」のように
取り組み事項が多ければ多いほど一つにかけられるエネルギー・リソースは小さくなります
結局たいした前進はのぞめません
これ以外にも「間違った戦略」として
非現実的な戦略目標を立てる
というものがあります
解決しなければならない問題なのだが
どうやって達成してよいか分からない場合
多くの苦労のわりに成果が得られないケースがあります
メキシコなどでの麻薬撲滅運動がこの例として挙げられます
いかに麻薬の追放が望ましいとはいえ、政財界や警察の現状(麻薬組織との癒着)などをみる限りでは、さしたる前進が望めないようにみえます
戦略実行のための強力な手段として
実現可能な近い目標を定める
というやり方があります
そして、その達成を果たしたのち、次の新しい展開につなげていくのです
「悪い戦略」が生み出される理由
多くの「悪い戦略」が生み出される理由
つぎのようなケースが挙げられます
戦略ツールという名の穴埋め式テンプレートを使う
重要な問題に集中出来ず困難な選択を避ける
ポジティブシンキング, 精神論, 信念などのマインド的思考へ傾倒する
そして最も戦略を「悪い戦略」たらしめる決定的な要素は
抱えている困難な状況に対する調査・分析を行わない
ということ事なのです
分析とは起こりえる事態を、考えることからスタートします
当然その中には好ましくないものも含まれます
そうであるにもかかわらず
何事も念じればかなう
成功するイメージを強く持つ
意思は必ず実現する
こうしたポジティブシンキングなどのマインド的思考に、身をゆだねてしまうということは、「良い戦略」をあきらめることと同じではないでしょうか
想像してみてください
大空を飛ぶイメージだけを思い浮かべ、失敗を考えたことのない人の手で設計された飛行機
これには誰だって乗りたくないと思いますよね
これまで「悪い戦略」についてフォーカスを当ててきました
それでは反対に「良い戦略」とは、どんな特徴をもっているのでしょうか
「良い戦略」の2つの特徴
①状況を分析し重要な問題に取り組む
戦略が効果を発揮するため必要なこととして
現在抱えている問題は何か?
という問いを分析し
そこから導かれた根本的問題に
直接アタックすること
が大変重要です
ここではあの有名なアップル社の事例を紹介します
マイクロソフトがWindows95を発表し、インターネットの普及に合わせ業務用だけでなく一般向けにも爆発的に売れていました
そのような中アップル社は窮地に追い込まれます
いよいよ倒産2カ月前
このタイミングでスティーブ・ジョブズが、アップル社のCEOにカムバックします
高度な新製品開発への大型投資、他社との合併交渉
そういった業界の予想を裏切ってジョブズが行ったことは
窮地に置かれているアップル社の現状をよく観察し、その上で行われた教科書的常套手段(選択と集中)だったのです
ジョブズのとった選択と集中
- 独自OSの採用をやめ外部にライセンスする
- Mac向けソフト供給含むマイクロソフトとの歴史的和解
- 15あったデスクトップ機、ノートPCをたった1機種に削減
- プリンターなどの周辺機器はすべて切り捨て
- ソフト開発をやめて開発エンジニアの整理
- 6系列から1系統へ代理店を削減
- 製造部門も全廃し台湾への製造請負企業への切り替え
これらの方策により在庫を80%以上切り詰めることに成功
さらにオンラインストアを立ち上げ、小売りや代理店など通さない消費者への直販をスタートします
この戦略を導き出したジョブズは、当時の現状をこのように分析していました
当時のアップルは増やしすぎた販売店からの、いろいろな要望に応えようとしてモデルを増やしすぎていました
そのため製品ラインナップが複雑になりすぎ、無駄な経費を垂れ流していたのです
この重要な課題を分析により明らかにし、戦略に基づいた行動をとった結果
1995年に110億ドルだった売上高を、1998年には59億ドルへと激減させるものの
0.3億ドルの純利益を計上させ黒字へと転換することが出来たのです
アップルのとりあえずの再生にこぎつけたジョブズでしたが、まだ市場シェア4%のニッチから抜け出せないでいました
そんな状況でのジョブズのコメントが掲載されています
ジョブズは今の業界で成功するために何が必要か
障害は何か、、自らの強みは何か、、
まるで獲物を逃さない捕食者のように、機会の窓が開くのを待っていました
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②強みを発見する
力の差をくつ返し状況を好転させる戦略の重要要素が
自らの強み そして 相手の弱み
になります
しかし、すでに明らかになっている、「強み、弱み」であれば対策をされてしまい、有効に活用することは難しくなります
「自らの強みを相手の弱いところへぶつける」
は口で言うほど簡単にはいきません
そこで重要になるのが次のポイントになります
自らがもつかくれた強みを発見する
本書ではこの例として、旧約聖書に記されている紀元前1030年頃のペリシテ軍とイスラエル軍の戦い
ダビデとゴリアテの物語で解説がされています
両軍がエルサレム近くで対峙した時
ペリシテ軍からゴリアテという
青銅の鎧に身を固め 巨大な槍をもった百戦錬磨の兵士
が名乗りを上げてイスラエル軍に一騎打ちを挑んできました
イスラエル軍の誰もが巨漢のゴリアテに恐れをなして挑もうとしない中、正規兵ではない少年のダビデが名乗りを上げます
ここで二人の強み、弱みを比較してみましょう
この比較からも分かる通り、誰もがゴリアテの圧倒的有利を疑いません
イスラエル軍の王様も、二人の圧倒的な力の差を心配して、ダビデを引き止めようとしました
しかしダビデはやめようとはしません
しかも王様から与えられた鎧兜も脱ぎ捨ててしまいます
誰もがゴリアテの勝利を疑わない中
ダビデは自らの身の軽さを武器にゴリアテの突進をかわし、そして投石器という遠距離からの攻撃を行います
その石が、兜で覆っていなかったゴリアテの眉間に見事命中
ゴリアテを気絶させたのです
2人の戦いが始まり、ダビデが機敏な動きでゴリアテをかわす
顔がおおわれていないゴリアテめがけ石が投じられて初めて、これまでの強みと弱みの関係が改められたことに気づきます
最後は、ダビデが気絶したゴリアテの剣を引き抜き、見事その首を撃ち落として勝利します
これがきっかけとなりペリシテ軍は総崩れとなりイスラエル軍は大勝利を得るのでありました
チェンジ・ザ・ルール! なぜ、出せるはずの利益が出ないのか [ エリヤフ・M.ゴールドラット ] 価格:1,760円 |
これまでの視点では強みとして認知されないものが、見方を変えることで圧倒的な強みに変わることがある
更に本書内では、まだ小さくダビデのようなチャレンジャーであったウォルマートが、当時の巨人ゴリアテであるKマートを圧倒し急成長を遂げた事例について、実際のMBAコースのディスカッションをまじえた解説が紹介されています
巨人Kマートを打倒したウォルマートの強み
価格:2,200円 |
「良い戦略」の基本構造
これまでいくつかそのポイントとなるところについて解説をしてきました
実際に「良い戦略」を立てるにはどう考えたらよいでしょうか
「良い戦略」には基本構造があります
ルメルト教授はそれを「カーネル(核)」と呼んでおり、次の3つの要素から構成されています
①「診断」
②「基本方針」
③「行動」
①「診断」
置かれている状況を診断し取り組むべき課題を見極める
複雑に絡み合った状況を解きほぐし、重要な問題点を選り分ける事が良い「診断」といえます
②「基本方針」
診断で明らかになった課題に対し、どう取り組むのかという大きな方向性や方針を示す
③「行動」
「基本方針」を実行するために設計された、一貫性のある一連の行動全体をさします
この3要素の構成が非常に有用であることを分かりやすく理解するため、医者の治療行為を例にして解説します
医者にとって解決すべき問題は患者の治療になります
医者の治療における、「診断」、「基本方針」、「行動」の3要素とは、どういったものになるでしょうか
「診断」
患者の症状を診断し病名を明らかにする
「基本方針」
明らかになった病気に対する治療方法を決定
「行動」
治療方法に沿った投薬、手術などの医療行為
この一連の流れにより患者の完治を目指す形になります
「良い戦略」とはこのように
「診断」>「基本方針」>「行動」
戦略検討のケースステディ
具体的な実例として町の食料品店をテーマとし
「診断」>「基本方針」>「行動」
の3要素による戦略検討の流れを示していきましょう
実際の店舗オーナーというものは、今後の店舗運営に関して、数多くの決断を下さなければなりません
- 今後、店をどのようにしたらよいか
- これまでの低価格を維持したらよいのか?
- 方向転換し鮮度の良い食品や有機野菜を取り扱った方が良いのか?
- 地元に多い学生向けの食品を仕入れた方が良いのか?
- 駐車スペースを広げた方が良いのか?
- 地元の新聞に広告を出すべきだろうか?
- 店内のレイアウトを見直した方が良いのか?
- 照明をもう少し明るくした方が良いのだろうか?
このオーナーに対し経営学者がアドバイスをするならば
「利益を最大化するような行動をとりなさい」と答えるでしょう
しかし、具体的な行動指針が示されていない
このようなアドバイスはまったく役に立ちません
それでは先ほどの
「診断」>「基本方針」>「行動」の3要素を使って、戦略を組み立てていきましょう
①「診断」
まずはオーナーに
現状何が頭痛の種なのか?
を診断するようアドバイスをします
すると
地元に新しくできたスーパーとの競合が問題だ
そのスーパーは年中無休の上に値段も安い
そんな相手からどうやってお客さんを獲得すればよいのか、、
と答えが返ってきました
ここで状況を整理します
今の店に来ているお客さんは近くに住んでいる人が大半
地元の大学生か、近くで働くサラリーマンに二分される
学生は値段重視
会社員は短時間で買い物を済ませられる点がスーパーよりも好まれている
こうして状況を整理することで一つの選択肢が浮かび上がります
両方のニーズに答える一石二鳥の戦略があれば一番よいのですが、、
今回の場合、両者の違いは大きく、2兎追うのには無理があります
どちらかを選ばなければ中途半端になってしまうと考えました
「診断」を行うことで重要な問題を選り分け
取り組むべき課題を見極めることが重要
②「基本方針」
オーナーは考えた末
「忙しく働く人たちのニーズにこたえる」
これを「基本方針」に選び、「忙しくて料理する時間のない人」をメインターゲットとして絞り込みました
このように決断して立てた基本方針が最適だったのか?
これを確かめる方法はありません
大切なことは「基本方針」を立てて、行動を絞り込んでいくことです
「基本方針」を立てなければ
様々な決断を行い「行動」する事が出来ない!
方針を立てなければ、最初に挙げたような様々な決断に対し、答えを出すことが出来なくなるからです
③「行動」
オーナーは基本方針として立てた
「忙しく働く人たちのニーズにこたえる」
により絞り込んだターゲットのニーズを考えて数々の選択が出来ます
- 2台目のレジカウンターを設置
- 駐車スペースの追加検討
- スナック類を減らしおかずや惣菜を充実させる
- 会社員は学生と違い夜中の買い出しは少ないため深夜営業はやらない
- 会社員の昼休みや退社時などに合わせ多めに店員を配置
このように「基本方針」をしっかりと立てることで、その後の行動を次々と決めることが出来ます
そして、目的達成に向け、これらの行動をうまくコーディネートして集中させることが出来るのです!
④まとめ
それでは最後におさらいをしていきましょう
「悪い戦略」の特徴として挙げられるものとして、次の4つにわけることが出来ます
①空疎である(中身がない)
②重大な問題に取り組まない
③目標と戦略を取り違える
④間違った戦略目標を掲げる
そしてこれらの「悪い戦略」が生み出される理由として挙げられるものは
- 戦略ツールという名の穴埋め式テンプレートを使う
- 重要な問題に集中出来ず困難な選択を避ける
- ポジティブシンキング, 精神論, 信念などマインド的思考への傾倒
その中でも最も戦略を「悪い戦略」たらしめる決定的な要素が
抱えている困難な状況に対する調査・分析を行わない
「悪い戦略」の対極にある「良い戦略」がもっている特徴というものは
①状況を分析し重要な問題に取り組む
②強みを発見する
そして「良い戦略」は論理歴な基本構造をもっており、次の3つの要素から構成されていました
①「診断」
②「基本方針」
③「行動」
これまでの内容で「良い戦略」と「悪い戦略」を見極め方を学びました
そして不毛な「悪い戦略」を回避することが可能になり、また自身の戦略を「良い戦略」として立てることが可能になりました
本書では、さらに「良い戦略」に重要な「強み」について、また戦略家(ストラテジスト)の思考法
戦略という分野に対する科学的な仮説、また戦略思考をする上でのテクニックなども掲載されており、必ずやあなたを助ける一冊になるでしょう
経営戦略論の教科書として評判の高い「競争戦略」の著者、マイケル・ポーターも引き合いに出されるほど、経営戦略、戦略理論の第一人者であるルメルト氏による本書
MBAコースを思わせる多くのケースステディとそのディスカッションは、戦略に少しでも興味がある方全員に強く推薦できる一冊になっております
価格:2,200円 |
是非本書を手に取って一読してみることをオススメして、今回の書評は終わりたいと思います
それでは、ありがとうございました!
また次の書評でお会いしましょう♪